目次
障害者グループホーム開業のための物件選び
障がい者グループホームの設備基準の概要
障がい者グループホームは、特定の地域内(通常は移動が可能な範囲で、グループホームの一体的なサービス提供に影響を及ぼさない距離)に複数の共同生活住居やサテライト型住居を有する施設です。以下のような設備が必要とされます。
① 共同生活住居
複数の個室と共有の居間、食堂、トイレ、浴室を備える住居。
個室の面積は内法面積で最低7.43㎡以上が求められます
② サテライト型住居
本体の共同生活住居との協力による、一人暮らしに近い住居形態。本体住居からおおよそ20分の圏内に位置することが要求されます。
立地場所 | 入所施設や病院の敷地内でなく、住宅地においても地域住民と同じく交流できる環境であること |
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居室 | 各個人に対する専用の居室を準備し、居室面積は内法面積で7.43㎡以上(ただし、必要に応じて2人とすることも可能)とし、収納スペースを除きます。 |
建物 | アパート、マンション、一戸建てなど、賃貸や自己所有のいずれの形態でも適用可能です。 |
共同生活住居の入居定員 | 本体住居の場合、通常は2人以上から10人以下(ただし、既存建物使用の場合は最大20人以下となります)。※ただし、日中サービス支援型の場合は最大20人以下となります。 サテライト住居の場合は1人です。※全体の事業所定員は4人以上となります。 |
ユニットの定員 | 2人以上から10人以下の人数が対象です。 ユニットとは、居室とそれに隣接して設置される施設を含む設備によって、統合的な交流を行うことができる生活単位を指します。 |
居室以外の設備 | 台所、トイレ、浴室など、日常生活に必要な施設の他に、交流を促進する場(例えば食堂やダイニング)を確保する必要があります。共同生活住居の配置、構造、および設備は、例えば車椅子利用者の場合、適切な廊下幅や段差解消を考慮して設計されるなど、利用者の障がいに合わせた工夫がなされている必要があります。 |
住居の箇所数上限 | 2戸(本体住居が4名以下の場合は1戸まで) |
他の法令の制限 | 建物の新築や既存建物を用いたグループホームの開始、事業の運営においては、障害者総合支援法だけでなく、建築基準法や消防法などの関連法規も順守する必要があります。 |
障がい者グループホームの
立地場所について
障がい者グループホームの設立において、利用者の家族や地域住民との交流が重要な要素となります。
障がい者グループホームの位置選びには、以下のポイントに留意する必要があります。
・住宅地や同様の環境で、利用者の家族や地域住民と交流できる機会が確保される場所であること
・入所施設や病院の敷地内ではないこと
・通常、日中サービスを提供する施設(生活介護、自立介護、就労移行支援、就労継続支援A型およびB型、日中一時支援)と同じ敷地や隣接地でないこと
さらに、地域住民の理解を得ることも肝要です。
これは指定要件ではないものの、障がい者の施設が近隣に設けられることに懸念を抱く方もいるかもしれません。したがって、近隣住民の理解を得ないまま事業を進めると、将来的にトラブルが生じ、事業の継続が難しくなる可能性もあります。
そのため、地元の自治会長などに説明を行うなどして、地域住民の意見や懸念を把握し、適切な配慮を行うことが求められます。
この点は、自治体の担当者からも頻繁に確認されるでしょう。
障がい者グループホームの建物について
障がい者グループホーム施設において、立地条件は重要ですが、優れた物件であっても、建物が建築基準法や消防法の基準を満たさない場合、その建物を利用することは不可能です。
①建築基準法について
障がい者グループホームは、建築基準法の規定上、『寄宿舎』と分類されます。
そのため、既存の戸建住宅などを障がい者グループホームとして利用する場合、より厳格な防火・避難に関する基準を満たさなければならず、そのためにはかなりの費用が必要です。
ただし、大阪府では、障がい者グループホームの設置を奨励するため、一定の安全性が確保された既存の戸建住宅をグループホームとして活用する場合、その建物を「一戸建て住宅」として扱い、建築基準法の防火・避難規定を適用することが認められています。
さらに、床面積が200㎡を超える場合、建築工事に着手する前には「用途変更」に関する建築確認申請手続きが必要です。
一方、床面積が200㎡以下の建物については、建築確認申請が不要とされていますが、新たな用途に合わせて防火や避難に関する規定を満たす必要があります。
用途変更にはかなりの費用がかかることがありますので、200㎡を超える物件は避けることが賢明です。(ただし、令和元年6月25日に対象面積が100㎡よりも緩和されました)
既存の建物を活用する際には、その建物が建設時または増築時に適切な建築基準法の規定に従っていることを確認するため、「完了検査済証」が存在するかどうかを必ず確認してください。
建物の完了検査の記録は、物件の場所に関連する建築確認所管行政機関から提供される「建築基準法による処分の概要書」を通じて確認することも可能です。
もし完了検査が実施されていない場合、当時の施工業者や施主による建築確認通りの施工が行われていることを確認する必要があります。
また、用途変更などの建築確認申請については、建築士に相談することをおすすめします。
②消防法について
障がい者グループホームの建物は、消防法において特定防火対象物として厳格な消防設備の設置基準を満たす必要があります。
特定防火対象物には(1)項から(20)項までの分類があり、障がい者グループホーム施設は、避難が難しい障がい者などを主に収容するホーム【(6)項ロ】と、その他のグループホーム【(6)項ハ】に区分されています。
(6)項ロに該当する施設では、スプリンクラーの設置が必要とされています。
なお、避難が難しい障がい者などを主に収容するホームとは、障がい支援区分が4以上の者が定員の約8割を超えることを目安としています。
その他にも、避難誘導灯、自動火災報知設備、消火器などの設備が必要とされます。
(6)項ロ該当 | (6)項ハ該当 | |
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消火器 | 全ての施設 | 全ての施設 |
自動火災報知機 | ||
火災通報装置 | 延べ床面積500㎡以上 | |
スプリンクラー | 延べ床面積6,000㎡以上(平屋建てを除く) | |
防火管理者 | 収容人員10人以上 | 収容人員30人以上 |
(平成27年4月1日施行消防法令改正による設置基準)
詳しくは、事前に物件所在地の消防署予防課で事前に確認してください。
障がい者グループホームの設備基準
障がい者グループホームの住居内には、次のような設備が必要とされています。
居室
居室とは、利用者のプライバシーを尊重するために個別に確保された個室のことを指します。
・通常は1人部屋を原則としますが、必要に応じて2人部屋にすることも可能です。
・各居室は廊下や共用スペースへの出入り口を持ち、他の居室とは明確に区別されていることが求められます。
・ただし、カーテンや簡易なパネルなどで室内を仕切るだけでは、その空間を居室とはみなしません。
・各居室の面積は、収納スペースを除いて最低でも7.43㎡(約4.5畳分)以上必要です。
居間・食堂
利用者同士やスタッフとの交流を促進するための場所です。
・利用者とスタッフが快適に集まれる十分な広さが必要です。
風呂
・利用者の特性に応じたものが必要
洗面所
・利用者の特性に応じたものが必要
トイレ
・利用者の特性に応じたものが必要
台所
・利用者の特性に応じたものが必要
これが、障がい者グループホームを設立する際に必要な建物と設備の要件です。
ここで説明した内容は詳細ではないため、設備に関する疑問が生じた場合は、物件を契約する前に、必ず専門家または関連する行政機関に相談してください。
障がい者グループホームの
開設をご検討の方へ
障がい者グループホームを立ち上げるためには、事業計画の策定、適切な物件の選定、スタッフの確保、必要な施設や機材の手配など、多岐にわたる作業が必要です。
また、指定申請に必要な書類も多く、手続きが進まないケースもあるようです。
さらに、運営に当たる際には、障害者総合支援法や厚生労働省からのガイドラインや通知の趣旨を正確に理解することが重要です。
弊事務所では、障がい者グループホームの立ち上げを希望する事業者の皆様に対し、開設から運営までのサポートを提供しています。
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