放課後等デイサービスを開業する方へ

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放課後等デイサービス開業のための物件選び

放課後等デイサービスの
開業のための物件選び

放課後等デイサービスを開業する際には、物件選びが極めて重要です。指定を受けるためには、放課後等デイサービスの設備基準に適合し、消防法や建築基準法の要件を満たす物件である必要があります。従って、放課後等デイサービスとして使用する物件が確定することで、物件調査や開業の準備がスタートする段階に入ったと言えます。

ただし、放課後等デイサービスが子どもたちの集まる場所であるため、火災時における安全性には特に厳しい規制が適用されます。障がいを持つ子どもたちは、火災時にパニックを起こしたり、火災の危険性に気付かなかったりすることがあります。そのため、放課後等デイサービスを運営するためには、これらの規制に適合した物件でなければなりません。

放課後等デイサービスで
使用する物件は戸建て?テナント?

放課後等デイサービスを開業する際、都市部では主にビルのテナントとして展開される傾向が見られます。同時に、郊外地域では戸建ての賃貸物件を活用して放課後等デイサービスを提供する事業所も存在します。戸建てやマンションのテナントを利用する場合でも、誘導灯などの追加の消防設備が必要なケースが多く、消防署予防課との事前協議や相談が欠かせません。

放課後等デイサービスの物件選びには多くの注意点が存在します。ここは障がいを持つ子どもたちが集う場所であるため、使用する物件には多岐にわたる規制が適用されます。

市街化調整区域で
放課後等デイサービスはできますか?

通常、「市街化調整区域」では、放課後等デイサービスの事業を行うことは制約されています。このため、物件選びの初めに行うべき重要な確認ポイントとして、事業を展開する予定の地域での「用途地域」の確認が挙げられます。市街化調整区域は、都市計画において市街化を制限するために設けられた地域であり、一般的にこの区域では放課後等デイサービスの事業を行うことは認められていません。

放課後等デイサービスの
物件周辺の環境は?

放課後等デイサービスを提供する場合、事業所の周辺に公園や遊戯施設などがあると便益です。近隣の公園や施設を有効に活用して、子どもたちの療育を進めましょう。

放課後等デイサービスにおける
建築基準法は?

2019年6月27日に施行された建築基準法の改正により、放課後等デイサービスとして床面積が200㎡を超える場合、建築基準法上で「用途変更の確認申請(用途変更手続き)」が必要です。

この用途変更の確認申請手続きには、当該物件の「確認済証」と「検査済証」が必要です。用途変更手続きは、建築基準法第6条の確認申請手続きであり、建築行政の分野に関わる手続きです。このため、行政書士では対応できず、建築士などの専門家に依頼する必要があります。手続きの費用はケースによって異なりますが、一般的には高額になることがあります。詳細については、建築士などにお問い合わせいただくことをおすすめします。

検査済証がなくても確認申請ができる場合

検査済証がない場合でも、「建築基準法適合状況調査報告制度」によって、用途変更や増改築の確認申請が一定の条件下で可能となるケースがあるようです。

この調査報告制度は、特定の行政機関が、検査済証のない既存建物の調査を一級建築士などに依頼し、建物が関連法令に適合しているかどうかを報告させる制度です。この報告書を提出することで、用途変更や増改築の確認申請が許可される場合があるとされています。

ただし、注意が必要なのは、検査済証のない建物について、用途変更の工事を完了させてしまった場合には、用途変更の確認申請が不可能であり、調査報告制度も利用できないことです。また、建築基準法や地方条例に適合しない点が他にもある場合、確認申請ができない可能性があります。

詳細については、建築指導課や建築士などの専門家にお問い合わせいただくことをおすすめします。

さらに、放課後等デイサービスの用途として利用する物件の床面積が200㎡以下の場合、用途変更手続きは必要ありません。

ただし、用途変更手続きが不要であっても、物件は建築基準法に適合している必要があります。このため、法令遵守の証拠として「確認済証」と「検査済証」のコピーの提出が求められます。(自治体によっては、建築計画概要書や建築基準法に基づく確認済証など、建築確認手続きの証明書を代替とすることもあるかもしれません。)

もしも「確認済証」や「検査済証」が入手できない場合、または代替資料によって建築確認手続きを証明できない場合、建築士などの専門家による適合証明書の提出が必要となります。この際には建築士に報酬が発生することが一般的です。

このため、物件選びの際には、用途変更手続きが不要な、つまり床面積が200㎡以下の物件を選択することが良いでしょう。」

放課後等デイサービスの開業で
防火対象物使用開始届を取る際の注意点

放課後等デイサービスの指定申請に際して、一部の自治体では「防火対象物使用開始届」の提出が必要です(自治体により異なる)。ただし、自治体によっては初めに「防火対象物使用開始届」を求めない場合もあります。しかし、消防法に合致した設備を整備することを念頭におきましょう。

また、消防法は非常に煩雑なものであり、同じ放課後等デイサービスとしての用途であっても、建物の構造や他のテナント入居者との関係によって、必要な設備が異なることがあります。そのため、必ず消防署との間で事前に相談や協議を行うことが大切です。

放課後等デイサービスの開業の際の
消防用設備のポイント

・放課後等デイサービス…消防法施行令別表第一の6項ハ(4)に該当

・放課後等デイサービスは消防法施行令別表第一の6項ハに該当しますので、以下のように6項ハに該当する場合の物件面積や階数によって設置すべき消防用設備等も定められています。

6項ハ(4) 児童発達支援センター、情緒障害児短期治療施設又は児童福祉法第6条の2第2項に規定する児童発達支援若しくは同条第4項に規定する放課後等デイサービスを行う施設(児童発達支援センターを除く。)
延面積 設置すべき消防用設備等
全部 誘導灯
全部 カーテン等の防炎措置
全部 自動火災報知機(利用者を入居させ宿泊させる場合に限る)
150㎡ 消火器具
地階・無窓階 設置すべき消防用設備等
50㎡ 消火器具
150㎡ 屋内消火栓設備(準耐火≧300㎡、耐火≧450㎡)
150㎡ 動力消防ポンプ設備(準耐火≧300㎡、耐火≧450㎡)
収容人員 設置すべき消防用設備等
(階)10人 避難器具(詳細条件あり)
(階)20人 非常警報器具
(階)20人 非常警報設備(地階、無窓階)
(階)20人 避難器具
(階)30人 防火管理者の選任

・もしビル内に他の福祉事業所(特定防火対象物)がテナントとして存在する場合、それは複合用途防火対象物(16項)となり、設備要件がより厳格になります。

・複合用途防火対象物とは、令別表第一の(1)項から(15)項までの防火対象物の用途の中から、2つ以上の異なる用途を有する防火対象物を指し、その中でも令別表第一の(16)項イ、(16)項ロに該当します。この場合、防火管理の義務は施設の収容人員数によって決まります。

(16)項 複合用途防火対象物のうち、その一部が(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項又は(9)項イに掲げる防火対象物の用途に供されているもの 収容人員30人以上。(6)項ロが含まれる場合は、10人以上。
イに掲げる複合用途防火対象物以外の複合用途防火対象物 収容人員50人以上。

・一定規模の防火対象物の管理権を持つ者は、適格な人材から「防火管理者」を選定し、防火管理業務を遂行する必要があります。

放課後等デイサービスを開業する際に、消防設備の工事が必要な場合、消防設備士を含む消防設備業者と事前に協議を行い、工事前の「設計届(着工前届)」と工事後の「設置届」を提出します。その後、消防署が実地で調査を行い、全体の進行状況を確認します。

事前相談 → 工事前の設計届 → 消防設備工事 → 工事後の設置届 → 防火対象物使用開始届 → 現地調査(現地確認) → 消防署が押印した防火対象物使用開始届の取得

この段階では、スケルトンから内装を設計する際には、防火基準に適合する素材の選定が重要です。したがって、「室内仕上表」や「建具表」などを持参し、使用する素材を詳細に確認することが必要です。

そして、「現地調査」が行われる際には、必要な設備が適切に設置されていることを確認するため、消防設備士とともに消防署と協議を行います。この協議は十分な注意が必要であり、調査に合格することで、放課後等デイサービスの指定申請に必要な「防火対象物使用開始届」に消防署が承認印を押してくれます。

当事務所では、放課後等デイサービスの開業時に消防設備工事が必要な場合、消防設備士と協力して消防署との協議を行います。この段階での丁寧な協議が重要です。なぜなら、十分な協議がない場合、現地調査での承認が得られず、防火対象物使用開始届を提出できない可能性があるからです。このようなリスクを避けるため、放課後等デイサービスの開業支援を考える際は、実績のある行政書士に相談してみることをおすすめします。

放課後等デイサービスの開業の際の
近隣住民への説明

放課後等デイサービスを開業する際には、近隣住民への説明が重要です。

法的な義務としては、放課後等デイサービスの開業時に近隣住民への説明会を開催する必要はありません。しかし、今後の事業運営において近隣住民の協力や理解が求められることも考えられます。そのため、最低限でも地域の自治会会長に挨拶し、近隣住民とのコミュニケーションを大切にすることが良い関係を築く一助となるでしょう。

放課後等デイサービスの
送迎車用の駐車場

放課後等デイサービスで送迎を提供する際には、駐車場の確保が必要です。放課後等デイサービスの目的は子供たちの自立を支援することですが、体調不良や特別なイベント時に送迎を行う必要があるため、駐車スペースを準備しておくことが重要です。子供たちができるだけ自分で通所することが推奨されていますが、柔軟に対応できるように複数台の車両を用意しておくことも検討すべきです。

放課後等デイサービスの設備基準

放課後等デイサービスを開業する場合、設備基準を満たす必要があります。

放課後等デイサービスとして使用する物件をスケルトン状態で借りる場合、内装工事や消防設備工事を始める前に、自治体の関係部署との事前協議(事前相談)を必ず行う必要があります。
放課後等デイサービスの事前協議では、内装の配置なども含めた詳細な間取りを確定させることが重要です。これによって、後で工事をやり直すことが発生するリスクを回避できますので、注意を払いましょう。

設 備 要 件
指導訓練室 ・訓練に必要な機械器具等を備えること。
・児童1人当たり2.47㎡以上(3.0㎡以上の自治体あり)。
・定員10名の場合、24.7㎡以上(30㎡以上の自治体あり)であること。
相談室 プライバシーに配慮していること。
静養室 必要な備品等を備えること。
事務室 鍵付き書庫を設置すること。
洗面所・トイレ 洗面所(手指洗浄)はトイレ内手洗いとは別々であること。

放課後等デイサービスの開業の際の
賃貸借契約の注意点

賃貸契約を締結する際には、契約の目的欄に「障害児通所支援事業」や「放課後等デイサービス」としての利用を記載します。また、通常の定期賃貸契約ではなく、自動更新の条件を盛り込んだ賃貸契約を結ぶことを検討します。この段階でも、正式な契約締結前に、賃貸契約の(案)を使って自治体に確認を取るように心がけましょう。

さらに、放課後等デイサービスを運営するためには、通常消防設備の工事が必要です。賃貸契約を結ぶ前に、物件の大家さんと協議し、必要な消防設備工事の承諾を得ることが重要です。特定の消防設備によっては、テナントだけでなく建物全体への工事が必要となる場合もあるため、費用の負担についても事前に合意しておくことが必要です。

放課後等デイサービスにおける条例の規制(福祉のまちづくり条例、バリアフリー条例など)

都市計画法や建築基準法、消防法以外にも、自治体によっては様々な条例で規制が厳しくなっていることがあります。たとえば、京都府の「福祉のまちづくり条例」や京都市の「バリアフリー条例」などが挙げられます。放課後等デイサービスを開業する場合、これらの条例にも適合する必要があります。

特に、京都府の福祉のまちづくり条例は、府全域で適用されますが、京都市の建築物に関しては、京都市建築審査課の窓口で協議が必要な場合があります。

これらの点を踏まえて、放課後等デイサービスの物件探しは注意が必要ですが、大まかなポイントとして以下のようにまとめられます。

不動産仲介業者さんへ放課後等デイサービス
の物件探しを依頼する際のポイント

・放課後等デイサービスの開業目的を明確に伝える。

・放課後等デイサービスに適した部分の面積が「200㎡以下」の物件を探す。

・放課後等デイサービス向け物件で「確認済証」と「検査済証」の有無を確認する。

・放課後等デイサービスの使用を検討する物件の賃貸契約は、自治体との「事前協議(事前相談)」完了後に締結する。

・大規模な消防設備工事が必要な物件は放課後等デイサービス向けとして選ばない。

※上記の要点を満たしていたとしても、必ずしも指定が認められるわけではありません。ケースごとに異なるため、自治体の担当部署に事前に確認を取ることが重要です。

放課後等デイサービスの開業において、物件探しは極めて重要な要素です。適切な物件が確保されていなければ計画は進められません。放課後等デイサービスの事業者は新しい施設を開設するために常に物件探しに取り組んでいます。適切な物件を見つけるためには、常に注意を払い続けることが大切です。

当事務所では、正式な指定申請の依頼があった場合に限りますが、放課後等デイサービス候補物件の消防法への適合性や必要な設備要件の満足度など、物件の調査も行っています。